story.11_身体が弱く、気も弱く、泣き虫で、

身体が弱く、気も弱く、泣き虫で、小学一年生の時は毎日学校でイジメられていて泣かない日はなかった。
虫眼鏡で火傷させられるとか、給食の牛乳を三本一気飲みさせられる、大きい相手と相撲をとらされる、カマキリで顔を切られる、追いかけられる、背後からボールを投げられる、無視される‥思い返せば色々あるけど、なんとなくいじめっ子を嫌いになれなくて、憎めなくて、恨むことも出来なくて、いじめてくる子どもより、助けてくれない先生や、見て見ぬ振りする人達の方がよっぽど嫌だった。スペインのサーカス団に入った当初も身体が弱く、寝込んでばかりいたのがきっかけで、女性達が無視してきたり、一人除け者にされたり、透けた舞台衣装を用意されたり「これ裸と変わらない」と泣きながらその格好で舞台に出たこともあった。親元離れたての14才の私にはちょっぴり過酷。
素直で、純粋で、どんな子も可愛い〜赤ちゃんだったのに、生きていく上で沢山の困難にぶつかり、人は強くも弱くも、へそ曲がりにも、捻くれ者にもなってしまう。環境も大いに関係すると思う。
スペインのサーカス団にいる時に一度刑務所へサーカスを披露しに行ったことがある。
目的は世界平和を訴える人間ピラミッドを見てもらうこと。ピラミッド天辺に登るのは小さな子ども、その子どもが拳銃をへし折り、平和の鳩を飛ばす。その後私達は観客と握手やハグ、ほっぺにキスをして回る。
「ありがとう」「ありがとう」「感動したよ」とハグや握手をしながら涙を流す人達。
あんな強そうで、イカツイ顔した人達が怖かったのが嘘のように愛しく思える瞬間だった。
彼らにも無邪気な可愛い時期が必ずあったはずだ。
偏見の目で見ていた自分の心にも気付く。
いつの間にか私も喧嘩もできるようになって、言いたいことも言えるようになった。むしろちょっとやり過ぎなくらい生意気なっちゃって‥これが環境の変化か。
高所恐怖症でありながら、空中ブランコを飛ぶようにまでなった、硬い体もサーカスがやりたいがために必死で克服した。
どこへ行くにも大きな壁はある、立ち向かうことが立派なわけではない。
私は小学2年生で学校をやめた、それでも生きている。学校は嫌だったけど、スペインのサーカス団では辛いことも乗り越えることができた。
小さな世界でこれしかないと思うことはない、私達の知っていることはほんの一握りにすぎない。