story.14_動物らしく、本能なのか

動物らしく、本能なのか子どもたちの中では上下関係らしきものがあった。
気が強く、正義感も強く、人を引っ張ることが得意な者が、やはりどこの世界でも上に立つ。
私の住むコミューンにもボスがいた。
とにかく強い、悪く言えば怖い(笑)しかし、何かあれば必ず助けてくれるし、とりあえず先頭に立ってなんでもやる。
まずは「この崖から飛べる人だけ仲間にしてあげる」その言葉に、子どもたち皆んなが勇気を持って崖からジャンプする。一番小さい子で4、5歳の子もいる。でも出来ない子はいなかった。
ある時には、貴重なおやつを取り上げられる。またある時は大人の財布からお金を盗むのを手伝った(もちろん自分もおやつにありつくためにはやるしかない)ある時は塀の上で馬になり、その上にボスが乗ってサクランボを収穫した。
ごっこでは、もちろんボスが主役で私は乗り物役だった。
ボスには逆らえないし、逃げたい時も多々あった。
だけど、いざとなったら必ず助けてくる頼もしい一面もあった。
小学一年の時、中学生の女子3人組が「金を出せ」とトイレでカツアゲをしてきた。震えながらお金をぷるぷる出そうとしていたら、まだ小学3年生のボスが助けに来た「遅いと思ったら!こらー!おまえらなにやってんだよー!」と、大声で叫びながら駆けつけてきた。
中学生を睨みつけ「行くよ!」と私の手を引っ張ってくれた。カツアゲ女子は大声に驚いて「ヤバイ!」と言いながら去っていった。
今思い出してもあの時のボスはかっこよかった!
ある日突然ボスがボスを卒業する日がやってきた。「私抜けるから、後はあんたに任せた」と…
その日から私がボスという役目を受け持ったはずだったが…とりあえず失敗の連続だった。
金を盗めば見つかりゲンコツ、お菓子盗めば捕まりゲンコツ、カッコつけて果物のタネを口から飛ばせばゲンコツ、結局私には「ボス」的なことは向いていなかった。
ただ、お話が大好きで小さな子に物語を作っては聞かせていたら、いつも子どもが自分の周りに集まっていた。
人には合うこと合わないことがあるんだな。